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名古屋高等裁判所 昭和44年(ネ)564号 判決 1970年1月22日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人らは三重県鳥羽市鳥羽一丁目先公有水面中原判決添付水域目録記載の水域につき埋立のための一切の工事をしてはならない。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人竹田準二郎、同滝本文也は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人鳥羽市代理人吉住慶之助は「控訴人の被控訴人鳥羽市に対する本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

《以下事実省略》

理由

当裁判所の審理判断によっても、控訴人の本件仮処分の申請は失当であると認められるが、その理由は、左記に附加するほか、原判決がその理由の項に説示しているところと同一であるから、ここに、これを引用する。

控訴人はその主張の権利を本件仮処分による差止を求める以外にはこれを擁護する方策がない旨主張するが、仮りに、控訴人が被控訴人らのなす三重県知事よりうけた免許に基づく本件水域の埋立によって権利を侵害されたというのであれば、控訴人は三重県知事を相手として右免許処分の取消を求める行政訴訟を提起し、これを前提として右免許処分の執行停止を求め得ることが明らかであり、しかるときは、右に対する裁判は第三者に対してもその効力を有する(行政事件訴訟法第三二条第一項第一号)から、これらは当然に被控訴人らを拘束することとなり、従って、被控訴人らに対し行政訴訟を提起したと同一の結果を実現し得るものであり、又或いは、右免許処分の無効を前提として損害賠償を求めうることも可能であるから、本件仮処分による差止を求める以外に救済を求め得ないとする控訴人の主張はあたらない。

よって、これと結論を同じくする原判決は正当であって、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 布谷憲治 裁判官 福田健次 杉田寛)

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